ヘルスケア企業はもっとデータ分析を戦略立案に活かせる

2022年10月04日
ヘルスケア企業はもっとデータ分析を戦略立案に活かせる

医療に関するデータを活用するための研修やコンサルティングを行う阿部と、データ分析のスペシャリストとしてそれを支える東。どのようにクライアントの抱える課題解決にあたるとともに、製薬業界の未来を見据えているのか。二人の対談を通して紐解きます。 

膨大なデータは、新しいビジネスのヒントにあふれている。 

阿部:製薬企業がベンダーから購入・利用しているデータにはさまざまな種類があります。製薬企業に勤める人なら誰でも目にすることがあるのは、各社が販売する医薬品ごとの売上高。自社品と競合品の現状を把握するために使われています。 

東:他によく見られるものに、各社のプロモーション・メッセ―ジの内容が分かるものがあります。MRの説明を受けたドクターにアンケートを行い、印象に残ったMRのメッセージを集めているんですね。例えば血圧のお薬だと、アピールポイントが数値だったり対象病態だったり、各社の違いが浮き彫りになります。 

阿部:近年注目されているのは、医療現場の患者情報を蓄積した「リアルワールドデータ」でしょうか。医師が行った治療内容が分かり、検査内容や薬の処方内容までつぶさに見えます。利用価値は高いのですが、いかんせん高額で、しかもデータ量が膨大だから扱うのが難しい。せっかく購入しても限定的な使用になってしまうケースは珍しくありません。 

東:国の省庁が公開しているオープンデータも便利ではありますけどね。年齢別や都道府県別などさまざまな切り口からデータを見ることができますから。コストを抑えつつ一定程度のリサーチは可能です。ただやはり、具体的な薬剤名までは分かりませんし、どうしてもベンダーから購入するデータに頼ることになります。 

阿部:データ内容が多いので、どこに着目して分析すればいいか分かりづらく、活用しきれていない企業さんも多いのではないでしょうか。そこで私たちの出番ということですね。 

デスクの上に座っている女性

中程度の精度で自動的に生成された説明

データの「分析」にとどまらず、戦略立案までがワンセットです。 

阿部:私が東さんにデータのとりまとめをお願いするのは、研修やコンサルティングの資料に使うため。いつも助かっています。 

東:研修の資料では、複数の企業さんが同時に参加する場合を考慮して、医薬品の実名や具体的な数値はぼかします。また、元のデータにはある種の「ノイズ」が含まれているため、研修用には分かりやすく市場の傾向を捉えられるよう、シンプル化の処理を施すことも。そんな中でも、リアリティが損なわれないように留意しています。 

阿部:研修用のデータは分かりやすさを重視してご準備いただいています。一方でコンサルティング案件の方は、複雑な市場環境を正しく、かつ分かりやすく分析するために、いつも二人で知恵を絞っていますよね。私はそれらの資料に基づいて、見るべきデータの探索や確定、分析の方法をクライアントに提案しています。 

東:提案にあたり、気を配っているポイントはどんなところでしょう? 

阿部:分析結果を伝える際に「こうすべき」までは提示しないことですね。私たちの役割は分析と、インサイトを読み取れるような可視化、データから読み取れる事実の整理まで。分析結果を基に戦略的な判断を下すのは、あくまでクライアントですから。その線引きはいつも意識しています。戦略立案のサポートが必要であれば、データ分析とは切り分けて対応しています。 

東:なるほど。データだけで正しい戦略を立てられないですからね。戦略立案のプロセスも踏まえる必要がありますし、その点は、戦略立案と人材育成を両方行っているスリーロックらしい考え方といえます。 

机の上にネクタイをしている男性

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データを通して、「人」が見えていますか? 

阿部:データを取り扱う際に求められる最初のスキルは、もちろん最低限のExcelスキルと、あとは意外に思う方も多いのですがロジカルシンキングでしょうか。 

東:そうですね。まずは解決したい課題を正しく捉えることが出発点。課題がどういった要素から構成されているかをロジカルに整理することで、フォーカスすべきデータも定まります。 

阿部:ビジネスの基本と同じですね。人材開発の観点から、ロジカルシンキングを主題にした研修もご依頼いただくことはあります。データ分析の話に戻りますが、マインド面でのポイントは何かありますか? 

東:膨大なデータを目の前にしても折れない心、でしょうか(笑)。 

阿部:確かに、データ分析力が伸びる人というのは、データに向き合い続けられる人だといえます。このことは、データ分析をする人たちの中でもよく話題にでますね。 

東:阿部さんは、他にどのようなポイントがあるとお考えですか? 

阿部:医師や患者さんといった「人」への興味がポイントかなと。売れ行きへの関心が優先すると、分析する範囲がどうしても狭まります。それでは膨大なデータの価値がほとんど活きず、効果的な戦略立案につながらない。もっと想像力を膨らませて、例えば「患者さんがここまで悪化してしまった要因として、以前になにがあったのか」まで知りたいと思えば、自ずとデータはヒントを示してくれるものです。 

東:「何のためにこの薬が必要なのか」という根拠をドクターに伝えられれば、説得力も増します。 

阿部:データを読み解くことで、間違いなく視野が広がります。当社の研修やコンサルティングを通して、「予想外のところに問題があった」「以前よりも格段にドクターや患者さんの状況を理解できるようになった」など、新たな気付きを得られたというお声をたくさんいただきました。私にとっても、大きなやりがいを感じる瞬間です。また、製薬企業の皆さんの「もっと患者さんや社会に貢献したい」という思いが、ひいては自社の利益にもつながる。昨今は、そういうスタンスが必要とされています。 

人, 屋内, 女性, 立つ が含まれている画像

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MRが目指すべき姿は、ドクターの「パートナー」です。 

阿部:製薬会社には、顧客理解の精度を高めることがこれまで以上に求められているように感じています。ここまでは本社に関連するデータの話をしてきましたが、医療現場を直接サポートしているMRの皆さんも、顧客を深く知った上で接していく必要があります。 

東:医師からすれば、ありきたりな情報を得るだけなら自身で検索しておしまいですからね。製薬会社として提供できる価値を高めるには、医師が診ている患者さんの課題解決にしっかりコミットしていくことが大切です。そのためには、医師と患者さんをとりまく現状を的確に把握しなければなりません。 

阿部:この10年くらい、今までは治療がかなわなかった疾患を治療できる医薬品が次々と登場しています。医療の進歩は加速度を増していますから、たとえ医師であっても、最新の情報をすべて把握し、絶えず頭の中をアップデートするのは容易ではありません。 

東:医療全般の知識が頭に入っている医師をサポートするには、MRは自分が担当している疾患領域に限ってなら、医師よりも深い知見をもっているぐらいでないと。そうすれば、医師自身が気付いていない潜在的なニーズまでが見えて、新たなビジネスチャンスにつながる可能性もあります。 

阿部:だからこそ当社の研修では、MRは医師の「パートナー」であるべきだと強調しています。医師から相談をもちかけられるぐらいの人じゃないと生き残れない。そんな時代になってきているのではないでしょうか。製薬企業の本社で働く人も現場で働く人も、データを活用する力がそのまま製薬会社さんの競争力につながるといっていいでしょう。そこで私たちのサービスがお役に立てるといいですね。 

歩道に立っている女性

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阿部 梨花 シニアコンサルタント 

外資系製薬会社に15年在籍し、MR、プロダクトマネージャー、プロダクトトレーナーを務めた。その経験を活かし、スリーロックではデータ活用に関するコンサルティングや研修を担当している。 

東 正英 アソシエイト 

内資系製薬会社で26年勤務。市販後調査やマーケティング、データマネジメントといった部門を担当。スリーロックでは、データ収集や分析に関する深い知見を活かし、同社が提供するコンテンツの基盤作りを支えている。 


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