今知っておくべきは「コミュニティ・アライメント」
~オムニチャネルとコミュニティをどう両立させるか

2023年06月29日
今知っておくべきは「コミュニティ・アライメント」 <br>~オムニチャネルとコミュニティをどう両立させるか

前回の記事「ペイシェント・ジャーニーはなぜ『使えない』のか?」ではペイシェント・ジャーニーの作成と活用について紹介しましたが、より良い医療を届けるためには、患者の周りにいるステークホルダーの存在を忘れてはいけません。患者を治療する医師に役立つ情報を提供することはもちろん大事ですが、対面での面談が厳しくなってきています。さらに地域のあらゆるリソースを使って患者に治療を届けることが求められており、対象とすべきステークホルダーは医師だけではなく、さまざまな医療従事者に加えて、行政などの幅広い利害関係者も含まれます。患者に寄り添いつつ、各自が役割分担をしながら必要とする支援・サービスを提供する「コミュニティ・アライメント(Community Alignment)」の考え方が、これからのヘルスケアビジネスの軸になりそうです。

患者への介入プロセスを明らかにする

「使える」ペイシェント・ジャーニーは、患者の治療の過程において重要な区切りを意識し、フォーカスすべきチャプター(章)を選んでから、そこを深く掘り下げて分析します。その際、対象とする疾患の代表的な患者像を作り上げたうえでペルソナ(患者プロフィール)を設定しますが、複数の異なる患者セグメントのイメージを持つことが重要です。同じ疾患であっても患者によって年齢や症状、生活環境などに違いがあり、必要な支援も異なるからです。

患者とステークホルダーの組み合わせによってニーズや課題は変わるため、適切な介入も異なります。その変化に応じた介入を行うことで患者の治療過程によい変化をもたらす、これがスリーロックの提唱する「医療ニーズの交差点」です。患者の行動変容を促すには医療従事者をはじめ、その他のステークホルダーとどのステージで出会い、介入するかによって変わってくるため、ペイシェント・ジャーニーだけでは不十分です。患者に加えて、ステークホルダーの分析・理解と介入点が重要となります。

そこで各ステークホルダーが患者に介入できるまでのプロセスを示す、Customer Experience Map(カスタマー体験マップ)を作成します。

そもそもカスタマーとは誰を指すのでしょうか。患者の治療では処方医が中心となって関わっていますが、専門医や看護師、薬剤師などの医療者、行政、保険者、患者の家族や友人などさまざまなステークホルダーが治療提供に影響を及ぼしており、この人たちをカスタマー(顧客)と考えます。

患者のステークホルダー

カスタマー体験マップの作成の手順は次の通りです。

1. 交差点の特定:ペイシェント・ジャーニー上でのカスタマーが患者と接触する方法や場所を指す。

2. 目的の設定:患者と接点を持つときに、カスタマーからどんな行動変容を得られるかを明確にする(As Is<現状>に対するTo Be<理想>を定義する)。

3. カスタマーの視点の理解:患者への介入点が現在ない、またはその介入点に適切な支援・判断・選択をしない場合はその背景をしっかりと理解する。どのような行動をとるのか、その時の視点や感情を理解する。前提となる知識や気づき、何が必要とされるのか、どのような課題や困難を抱えているのかを把握する。

4. カスタマーのエンゲージメントの改善:ジャーニー上でのカスタマーのエンゲージメントを改善するための施策を検討する。必要な場合、カスタマーのセグメント分けおよびペルソナ設定も実施する。

5. 全体のマップの作成と可視化:ペイシェント・ジャーニーを横軸に、縦にそれぞれのカスタマー・ジャーニーを組み合わせることで、両者の視点で行動変容を起こすための対応策を考える。

ペイシェント・ジャーニーとカスタマー・ジャーニー

オムニチャネルを踏まえたアクションプラン作成

カスタマーの意識・行動変容をトラッキングする手法に、「マインドセットのピラミッド」という考え方があります。カスタマーに対する段階的なアクションを通じて、ゴールに向かって望ましい変化を引き起こします。機会の実現によって、患者と医療界への大きな価値の提供と企業の成長が可能となるのです。

マインドセットのピラミッド

その際に意識すべきこととしてオムニチャネルがあります。多様なチャネルをシームレスに、カスタマーが利用できるようにすることで、カスタマーのエクスペリエンスを高めることができます。ブランドプランを作る過程では、企業目線でのチャネルシフトではなく、あくまでもカスタマー中心のコミュニティ・エンゲージメントを考慮しましょう。

患者の治療過程に影響を与える人は多く存在しますが、第一のカスタマーは処方医です。そのため、基本はペイシェント・ジャーニーに対し、処方医の介入点を示します。多くの場合、複数のカスタマーが介入していますが、カスタマーに対して別のカスタマーが介入することでカスタマーの行動変容を起こすことができます。これが、ステークホルダーであるカスタマーが患者と伴走しながら、患者を最適な治療に導く「コミュニティ・アライメント」です。


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